2008年11月16日掲載
Terje Gewelt            Hope
Resonant原盤           2002年頃録音

 街中でベースを抱えて歩いている人に出会うと、大変だなとの優しい思いと、邪魔なんだよなとの本音が交錯してしまいます。

 そんなベース・ケースが北欧の荒涼とした土地に立っているこのジャケットは、2005年に世に出ると、大変な人気盤となったのです。売り切れが続いており、2006年夏にようやく入手した途端に日本への帰任となり、しっかりとした装置で聴けるようになったのは、昨年後半からのことでした。

 さて Terje Gewelt はベーシストであり、この作品にはピアニストのChristian Jacob が参加してのデュオ作品となっています。この二人のデュオは2002年秋にノルウェーでツアーを行い、本盤ではその中のベスト・テイクが収録されています。

20081116

 澄んだ北欧の空気感に美しさを乗せたようなピアノ作品が、数年前から世の中にあふれ出しました。一時はそんな空気感を好んだんのですが、所詮は表面上の美しさだけで、あっという間に飽きてしまいました。

 この作品がそれらを一線を引いているのは、心底からの感情表現に溢れているところ。ピアノとベースとの音の対比の妙に合わさって、聴く方の気持ちが吸い込まれていきます。またこの作品の成功ポイントは、スタンダードを上手く配しているところ。

 この作品には4日間の演奏の中から、9曲収められています。恐らくは、違う曲も演奏していたことでしょう。それらを聴きたい気持ちもあります。しかし、怖い面もある。この作品は至極のベスト・テイクなのでしょうから、そこまで昇華出来なかった演奏は、お蔵に入れたままの方が良いでしょう。