パブロで活躍していた1970年代のズートが、欧州を訪れ、ケニー・ドリューと行ったライブ作品です。ニールス・ペデルセン(b),アレックス・リール(d)が加わってのデンマークでの演奏です。これはアメリカのヴァンテージ・レーベルに吹き込まれた公式レコーディングで、CD化されたのは1990年のこと。それから16年ぶりに、CDで再発されたものです。
「ヨーロッパを訪れたズート・シムズが旧友、ケニー・ドリューと繰り広げた心温まるセッション」と、国内盤帯に書かれております。シムズは1925年カリフォルニア州イングルウッド生まれ、片やドリューは1928年NY生まれ。従って旧友とは、幼馴染みという事ではなし。では頻繁に演奏を共にしていたかと言えば、レコーディングを見る限りでは、1954年にズートがプレスティッジに行ったセッションで、1度共演しただけ。演奏仲間とも言えないようです。
旧友という表現に引っ掛かったのですが、演奏内容も、ベテラン同士がライブを行ったという以上のドラマ性はありません。しかし帯に書いてある「心温まるセッション」という表現は、内容にピッタリの表現。1曲目の『flower waltz』から、ゆったりした空間に浸れる落ち着いたセッションを繰り広げております。そして随所に聴き所を用意するあたりは、ベテランの味。このワルツではない『flower waltz』から、エリントン作の『caravan』まで、楽しめる内容です。残念なのは、公式ライブ録音なのに、音質が悪いこと。そこを除けば、白人テナー・サックス好きの方には、無条件で勧める内容です。