1937年にカンザス州に生まれたサックス奏者ネイザン・デイヴィスのデビュー作品は、ドイツのレーベルに吹き込まれた本作品になります。兵役時代にはベルリンを中心に、駐屯楽団で演奏していたとのこと。その後、ケニー・クラークに目をかけられて、パリに渡ったそうです。また1964年に欧州に渡ったドルフィーとも、共演しておりました。
さてこのデビュー作品ですが、ウッディ・ショウ(tp)との、2管編成となっております。ラリー・ヤングも参加しており、何とピアノを弾いてます。ジミー・ウーディ(b),ビリー・ブルックス(d)が脇を固めており、クィンテットでの録音です。7曲中5曲が、ネイザン・デイヴィス作のもの。『Mister E.』という曲がありますが、これはドルフィーに捧げたものです。
国内盤帯には、『evolution』や、ウッディ・ショウ作の『theme from zoltan』を名作や人気といった言葉で紹介しておりますが、共に新しいものを狙ったかのようなマイナーの曲。ウッディ・ショウのトランペットは、不思議さを醸し出すためのアンサンブル用に使われております。しかし、別に感心する出来ではありません。
それよりも良かったのは、1曲目のネイザン作の『the flute in the blues』であります。ベースとドラムをバックにして、ネイザンはフルートでブルースを、軽い感じで吹いています。そして2曲目はスタンダード、歌手が好んで取上げる『spring can really hang you up the most』において、テナー・サックスでのサラッとした優しさを表現しております。この2曲において、ネイザンの飾らぬ人柄を感じ取れました。
帯で人気曲とされたものからは、既存の概念を打ち破らねばとの強迫観念を感じたのは、気のせいでしょうか。