2006年5月15日掲載
Tyler Summers      Trinity
Maxwell原盤        2000年10月録音

 リーダーのタイラー・サマーズはサックス奏者。見た感じは、20代前半というところ。名前は全く知られていない方です。この作品は、これまた無名なMatt Wigton(b),Stockton Helbing(d)が参加し、トリオで吹き込んだ作品です。知らないレーベルからの発売であり、ジャケもチープな作り。購入理由は、予感だけであります。

20060515

 威勢のいい若いサックス奏者に出会えて、少し興奮しながら聴き終えました。

 そのサックス演奏には、様々なミュージュシャンからの影響が伺えます。オーネットと思ったり、マレイと思ったりでした。また、ロックからワールド・ミュージックまで、ジャズのみならず幅広い音楽の影響を受けているのも、サマーズの演奏から聴き取れます。

 1曲目のサマーズ作の『metrolis』では、刺激的で速いフレーズ展開ですが、聴いていると情景がしっかりと浮かび上がります。13分弱の演奏最中でも、全く飽きさせない内容。サマーズだけではなく、ベースのマットの重く攻撃的なベースも特筆モノ。

 また4曲目の『seward/kenai』では、最初は故郷を思い浮かべるようなバラッド。美しい響きのソプラノ・サックス。その後には、子供の頃を思い浮かべて急に早口で語りだすような展開。これまたはっきりと情景が、目の前に提示されるもの。このような刺激的で想像力に富む演奏が他にも用意されており、あっという間に聴き終えた作品でした。

 さて、このサマーズ。これから先は、どのような方向に進むのでしょう。ジャズ・ファン側からすれば、ジャズ路線で進んで欲しいもの。しかし、この作品のサマーズから感じた彼の可能性からすれば、違う路線へ進むのも想像できるものです。仮にジャズ路線で進むのであれば、今のやんちゃなスタイルを暫くは維持して欲しい。若くして物事を悟ったようなジャズ・マンが多い中で、サマーズのようなタイプは貴重なものだからです。その上で、音色に深みが増し、取上げる曲のタイプを広げていけば、将来が楽しみです。

 サマーズは2005年にも作品を発表しております。ほぼ自主制作に近いレーベルでしょうから、その入手には難しさがあるでしょうが、根気強く探したいと思ってます。