前にも書きましたが、1980年代からジャズを聴き始めた人間にとっては、デビュー時のオーネットの演奏は、実に聴き易い演奏なのであります。しかし、その時代に聴いた人達にとっては、意味不明な演奏だったようです。解説を書いている悠氏は、そんなエピソードをいくつか紹介しております。面白いのでは、1950年代にデクスター・ゴードンのバンドで演奏していた時に、「二度と戻ってくるな」と激しく罵倒され、演奏途中でクラブから追い出されたそうなのです。
この辺りの現象は、例えば髪型で言えば、ビートルズが当てはまるのでしょう。デビュー当時は社会から罵倒された髪型なのですが、今振り返れば、実に可愛らしい髪型と言えるものです。
さて、本盤。ドン・チェリー(tp),パーシー・ヒース(b),シェリー・マン(d)が参加しており、一部の曲ではベースがレッド・ミッチェルに替わっております。1作目と比べると、同じなのはドン・チェリーの参加。ベースとドラムは、大物に変更になっております。これはプロデューサーのレスター・ケーニッヒが、1作目が注目されなかった理由は、無名の新鋭だけの演奏だったからだと、考えたようです。全9曲、オーネット作のものです。
覚えやすいメロディであり、記憶に残るメロディ。そして、気持ちを素直に叫んでいるかのような演奏。これは参加メンバーにも言えており、シェリー・マンの「ソングの伴奏をするといった感じではなく、人間の伴奏をしているような気持ちだった」という言葉にも表れております。
話し替わりますが、ジャケのオーネットを見ていると、新入社員だった時分の上司を思い出します。独特のキャラと考え方のお方であり、人の評価などお構い無しといった感じでした。そんな思い出がある新入社員時代は、この盤を買った時とほぼ同時のことでありました。