アイラーの作品は結構持っているのですが、ジャズ聴き始めの時に好きになった方ですので、LPが多いのです。従って、このコーナーで取上げたアイラー作品は2枚のままです。また去年初めだか一昨年の終わり頃に、10枚組の未発表CDボックスを買ったのですが、体力と精神力の問題で、未掲載のままになっております。
そんな中で2005年の春先に復活したESPから発売されたのが、今日取上げるCDであります。2枚に分かれて発売された「ラスト・レコーディング」は、アイラー・ファン必聴の作品。これは、1970年11月25日に亡くなったアイラーが、その4ヶ月前に行った最後のライブを収めたもの。南仏ニースの郊外、サン・ポールにある、マグー近代美術館主催の前衛音楽祭に招かれての演奏。この音楽祭でアイラーは二晩に渡って演奏しており、「ラスト・レコーディング」は、7月27日のもの。その二日前の25日に行われた演奏が、今回ESPより発掘されたものです。Mary Maria (ss,vo),Steve Tintweiss(b),Allen Blairman(d)とのクァルテット演奏。27日の演奏からは、ピアノのCall Cobbsが抜けた形になっております。
アイラー音楽の根底にある懐かしい響きと、肉声の如く演奏するサックス、そして当時のシーンに大きな影響を与えた革新性というのが、誰もが感じるアイラーの特徴でしょう。僕にとっての「懐かしい響き」に感じるものは、アイラーにとっては、ニューオリンズの響きなのでしょう。
本CDでコメントを寄せているベースのSteve Tintweissによれば、何でもこの25日の演奏は27日に向けての予行練習の意味合いがあったとか。その影響なのか、非常に落ち着きながらも自分の特徴を発揮するアイラーの姿がここにあります。Mary Mariaの詩の朗読とか,呻き声とか,歌らしきものは、余興と考えれば、そんなに気にすることは無し。
内ジャケには、コルトレーンの葬儀で演奏するアイラーの写真が、掲載されています。そう言えばこの時の演奏が、10枚組ボックスに収録されています。近いうちに必ずこのコーナーで掲載と言いたいところですが、その気になるのはいつのことでしょう。