2005年8月29日掲載
Ignasi Terraza       Jazz A Les Fosques
Swingfonic原盤      1999年10月録音

 こうやって文章を書くまでは、新譜だと思い込んでおりました。ピアノ弾きのイグナシさんの2003年録音のトリオ盤は、爽快なドライブ感に酔った作品でした。6月中旬のネット通販店DNの「New In CD」コーナーにこの作品が掲載され、反射的に注文しました。

 Manuel Alvarez(b),Oriol Bordas(d)との演奏です。

20050829

 5年ほど前の阪神に、星野伸之という投手がいました。確かフリーエージェントを使って、オリックスから移籍してきた投手です。阪神で実績はパッとしませんでしたが、全盛時代はの投球内容は見事なものでした。恐らく100キロを下回るようなスロー・カーブを多投して、時おり投げる130キロほどのストレートが効果的に決まるピッチング。打者にとっては、130キロほどのストレートが超速球に感じてしまうらしい。

 さて本題に話を移して、イグナシさんのピアノ演奏。豊かな感性が素直に表れているメロディです。そして単なる美旋律系のピアノで終らないのが、独特の間と、そこから繰り出されるタッチの強さであります。ポイントはこのタッチの強さ。野球で例えるならば、所詮130キロほどのストレートなのです。世間では当たり前の140キロなど、夢の夢。しかし、その130キロの出し方が上手い。全盛時代の星野伸之の投球のようにビシバシきまり、130キロが150キロになっているのです。イグナシさんの間の取り方の上手さが、この芸当のポイントでしょう。そしてそれは進化を続け、今の「It's coming」に結びついているのです。『love for sale』『I remember clifford』と続く展開が、今回聴いた中では、印象に残りました。