イグナシ・テラーザは盲目のピアニストで、スペイン出身のお方。これだけで考えれば、テテさんと同じですね。彼のwebページを見たところ、1962年生まれであり、何故か親近感を持ってしまいます。
1999年にリーダー作を2枚吹き込んでおり、本盤はそれ以来のリーダー作になります。Pierre Boussaguet(b),Grecory Hutchinson(d) とのトリオ作品で、前2作とはベースとドラムを変えてきております。ネット通販での購入先店では、ロング・セラーを続けている作品だということです。
気持ちの良い録音だ。3人の演奏が、音色も重量感も素晴らしい響きになっている。ピアノに関しては、音場感が足りないとか、オンマイク過ぎるとか批判する人もいようが、ジャズの魅力としては多少オンマイク気味の方が良いと思っている僕には、これが良いのだ。また3つの楽器のバランスが絶妙。配置にしても録音レベルにしても、実にバランスが取れている。
最近のCDでは、録音優秀盤を意識しすぎて、みょうちこりんな音色とバランスになっているものが見受けられる。その線からは外れている本盤であるが、外れて大正解だ。また最近のCDは、やたらとレベルを高くした録音が目立っている。店頭視聴機を意識してのものらしいが、本盤ではそんな心配は無用だ。
録音のことばかり書き過ぎたが、内容も良い。爽快なドライブ感の中に、様々な表現が散りばめられている。特にテラーザのオリジナル曲が良く、突っ走る『give me another』と、悩みを映したブルース『van gogh』が特筆もの。他にもスタンダードをテラーザなりの解釈で聴かせており、これまた良い。永いこと付き合えるピアノ・トリオ作品であると、予感させるのだ。