ジュリー・ロンドンは1955年から1968年までリバティに在籍していましたが、その間に「クライ・ミー・ア・リヴァー」というミリオン・ヒットを飛ばしました。しかし14年間のリバティ時代にヒット・チャート入りしたのは、この1曲だけ。それにも関わらず、20枚以上のアルバムが作られたのです。アルバムが売れる歌手だったのでしょう。そのアルバムには企画モノが結構あったようですが、今日取上げる作品も企画モノ。かなり古い歌を集めたものです。フォスターの曲があったり、20世紀初頭の曲があったりという内容です。
知っている歌に比べたらテンポがゆっくりしているので気付くのが遅れたが、1曲目の「comin' thru the rye」は加藤茶が歌っていた曲である。「誰かさんと誰かさんが麦畑。ちゅっちゅちゅっちゅしている、いいじゃないか」という加藤茶の歌である。タイトルは「誰かさんと誰かさん」だったと記憶しております。
さてこの曲はもともとスコットランド民謡だそうです。歌詞は大詩人らしいロバート・バーンズ(1759-1796)が書いたもの。日本では加藤茶のものではなく、大和田建樹が作った詩での「故郷の空」で明治唱歌第1巻に掲載され、広く親しまれていたそうだ。歌詞の内容は、バーンズのオリジナルとは全く違ったもの。
バーンズの詩の出だしは、「If a body meet a body, Comin' Thro' the Rye,If a body kiss a body, Need a body cry?」というもの。何と加藤茶の「誰かさんと誰かさん」は、オリジナルに沿ったものだったのかと、今回調べてみて驚きました。
ジュリーさんの歌の内容は、優しく丁寧に歌ったもの。色気と少女らしさが交差している、興味あるもの。全体的な印象としてはおとなし過ぎる感がありますが、「草競馬」等の古き良き曲をジュリーの歌で聴ける貴重な作品と言えるでしょう。