僕が持っているこのCDは国内発売もので、定価が3300円です。今となっては非常に割高な値段でありますが、購入した1980年代中頃においては、再発モノでもこの値段でありました。1980年代初頭のCDが世に登場した時分は、3800円だったかと記憶しております。従ってこの3300円とういうのは、当時は値下がりした価格だったのです。
さて1980年代中頃の僕はジャズを聴き始めて数年経ち、ヴォーカルものにも食指を伸ばし始めた時期でした。そんな時の購入盤は、どうしても超有名盤が中心だったのです。このアニタの作品も、超有名盤。そんな作品を僕は数回聴いただけで、CD収納箱に仕舞い込んでしまたのです。当然それ以降、アニタの作品を買うことはなし。本当に久し振りにこの作品を聴いて、何故仕舞い込んでしまったのかを思い出したいです。
「すいかずら」という花がある。吸葛とも忍冬とも書くそうだ。花言葉は、愛の絆。花の特徴を辞書で調べたら、「山野に生える、常緑のつる性植物。初夏に咲くじょうご状・くちびる形の花は、はじめ白色・淡紅色、後に黄色に変わる」とのこと。写真を見たところ、暖かくなってきた時期に写真を撮りに出かけた際に、よく見ていた花である。目立たず咲いているが、よく見ると綺麗な花である。
英語では「honeysuckle」という。ワッツ・ワーラー作のスタンダード「honeysuckle rose」も、この花を指している。ベタ惚れの女性と一緒にいることを、天に昇るような楽しさで表現している曲である。
アニタもこの曲をこの超有名盤の2曲目に用意している。改めて聴いた彼女の歌は、高い歌唱力とは違うものだ。音程が微妙に怪しくなる場面がある。その特徴を上手く使いながら、この曲を可愛く歌っている。しかし、可愛らしさと共に、「私のような女性と一緒のことを感謝しなさいよ」と男に言っているような、お高い雰囲気も併せ持っている。「すいかずら」の雰囲気ではなく、バラとかチューリップのような目立つ花の印象だ。
そう言えばSJで、アニタの1970年代初頭の日本でのライブの模様を読んだことがある。伴奏人は日本人だけであり、時に4バースをアドリブでメンバーに振り、振られたメンバーがうろたえているのを、アニタは楽しそうに見ていたとの内容だった。高慢ちきな女だとの印象を持った記憶がある。恐らくこれを読んだには、この有名盤を聴いた時期だったのであろう。高慢ちきさを感じて、僕はアニタを気に入らなかったのではないかな。
20年近く経って聴いた今でも同じ印象を持ったが、こういう女とも、付き合ってみたいとも感じ出した。先の「honeysuckle rose」などは、凝ったアレンジも気に入ったものだ。暫くは、この盤を時折り聴いてみよう。
話しを「すいかずら」に戻すが、坂本冬美が「忍冬(すいかずら) 気まぐれ道中~二人旅~」という歌を出しているそうだ。ネットの世界では、いろんな情報が得られるものだ。歌手としての坂本冬美にコメントする知識は僕にはないが、人の良さが表れている人だとの印象がある。
アニタにも「人の良さ」を感じられれば、20年近く前に好きな歌手になったことであろう。