2005年3月30日掲載
Stan Getz and The Oscar Peterson Trio
Verve原盤                 1957年10月録音

 名盤『At The Opera House』と同時期の録音。メンバーも似たようなもの。ゲッツにピーターソン、ハーブ・エリスにレイ・ブラウンといったもの。ドラムレス・クァルテットという編成。『At The Opera House』はゲッツとJJが主役で、ピーターソンは全く目立っておりませんでした。この盤では、ゲッツとピーターソンの掛け合いが期待できますね。『バラッド・メドレー』と称して、「言い出しかねて」など5曲のメドレーが聴き所でしょうか。

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 1曲目の『I want to be happy』は、元気一杯。ゲッツは1950年代半ばまでと比べると、すこし男らしくなってきている。またピーターソンは、己の存在感を示そうと、ハイ・スピード・フレーズを連発している。この録音はJATPツアーが終わった直後に行われたものだが、豪華メンバーのJATPなので、目立つべき場面を見逃さない術でも身に付くのであろうか。

 さて、関心の『バラッド・メドレー』。ピアノに導かれるように登場するゲッツの、惚れ惚れとするテナー・サックス演奏の「bewitched,bothred,and bewidered」。続く「I don't know why I just do」では、ギターが主役。ハーブ・エリスの職人芸ギターを、ベースがしっかりと支えている。そして次はピアノが主役の「how long has this been going on」。俺のバラッド・プレイは天下一品だぜ、とでも呟いているピーターソンの大きな体が目に浮かぶようだ。ここでもベースがしっかりとサポートしているが、続く「I can't get started」は、ベースが主役。太いベースから流れるメロディには、貫禄すら感じてしまう。ギターの好サポートも効いている。そして最後が再びゲッツがしっとりと吹く「polka dots and moonbeams」で締めくくられる。

 この10分間は、意識して聴けば5つの区切りが楽しめる。しかしメドレーとの意識を除いて聞けば、TS-G-P-B-TSというソロ順で演奏している1曲のバラッド曲ということになる。そして至極の10分間になるのだ。