アル・ハートはジャズ界の有名なトランペッターということなのですが、今まで彼の作品を意識して聴いたことはありません。1940年代には、ドーシー兄弟の楽団やレイ・マッキンレー楽団に参加。その後に自分の楽団を結成しました。ビア樽のような巨漢と髭顔で、ハートはニューオリンズの名物男として人気を博していたのです。
そんな彼とアン=マーグレットの接点は、二つあるそうです。一つはアン=マーグレットが、ノースウエスタン大学時代に作っていたザ・サトル・トーンズで、ラスベガスのデューンズ・ホテルのラウンジに出演した際に、ハートもこのラウンジに出演していたそうなのです。そしてRCA所属つながり。ハートは1960年に、アン=マーグレットは1961年にRCA所属となったのです。
そしてRCAがジャン・マレエ主演のフランス映画「美女と野獣」にひっかけて、この二人にコンビを組ませ作った作品が、本作品であります。この「美女と髭男」は、マーティ・ペイチがアレンジと指揮を担当しました。
ハートはトランペットを演奏するだけではなく、歌ってもいるのです。しかも全ての曲で。最初の曲では、この1曲だけで勘弁してくれよな、と強く感じました。しかし聴き進むと、このデュエットは、実に良い感じです。そしてハートはアン=マーグレットに対して、歌は気分を上手く伝えることが大切なのだよと、教えているようです。ハートとのデュエットを通してアン=マーグレットは、歌手として一歩も二歩も最長したように感じます。
まさか19歳差の美女と髭男ですから、あやしい関係にはならなかったでしょう。しかし歌の上では、美女が髭男に、見事に口説き落とされた感じです。