コルトレーンの没後20年に際して、後期コルトレーンが在籍していたインパルスが用意した、追悼セッションであります。リズム隊は、ピアノに黄金クァルテットを担ったマッコイ・タイナー、ドラムに1963年7月のニューポート・ジャズ祭りにおいて演奏された「マイ・フェイバリット・シングス」で奇跡的なドラミングを聴かせたロイ・ヘインズ、ベースにはコルトレーンとの共演暦はないセシル・マクビーが選ばれました。
そして、主役のテナー・サックス。これは、二人選ばれております。一人は順調な選択である、ファラオ・サンダース。もう一人が、デヴィッド・マレイであります。
ファラオ入りクァルテットで3曲、マレイ入りクァルテットで2曲、ピアノ・トリオで1曲演奏されております。そして、CDには追加曲があり、そこではテナー2本入りクィンテットの演奏が聴けます。取り上げている曲は、マッコイ作のコルトレーンに捧げたブルース。コルトレーンが何度も取り上げたスタンダード。そして、マレイ作の2曲です。
全体を通じて、ドラムの録音に大いに不満。バス・ドラをやたら強調した録音で、全体のバランスを大きく崩しています。
さて内容ですが、最初の3曲はファラオの演奏です。貫禄だけで演奏したネイマを挟んで3曲目は、「the promise」を取り上げております。渋い選曲ですよね。分かっている限りでは、1963年10月のバード・ランドでのライブでコルトレーンは初めてこの曲を取り上げており、それはレコードにもなっております。しかしこの曲は、同月後半に行われた欧州公演で数回取り上げられただけで、その後はコルトレーンによって演奏されたことが無い曲です。そんな曲をこの追悼盤で取り上げた真意は分かりませんが、ファラオは犯人を追い込める刑事のような迫力を、この演奏に込めております。
またマッコイなのですが、数多くの方が彼に対してコルトレーン黄金クァルテットでの演奏を求めておりますが、マッコイはそんなファンの欲求に応えた作品は作っておりません。この追悼盤でもそんなファンに応えているとは言えませんが、この「the promise」においては、少なからずそんな雰囲気を出しております。続く「lazy bird」は、ピアノ・トリオでの演奏。
そして、マレイの出番。「I want to talk about you」は、分かっている限りコルトレーンは20回取り上げており、その中の5回分は公式盤に残っております。この曲をマレイは、割とサラッと演奏してますね。続くマレイ作の「last of the hipmen」での迫力は、マレイ・ワールドを楽しめるもの。この曲を何故取り上げた意義が分からないのですが、演奏の迫力で独自の世界を築きだすことを、示したかったのでしょうかね。
マレイがファラオに花を持たせながら演奏したマレイ作の「trane」で、この追悼盤(CD編)は終わります。