1933年にアムステルダムに生まれたアン・バートンの初リーダー作品は、1967年録音の「ブルー・バートン」でした。この作品は1970年に日本で発売されたのですが、かなりの評判を呼んだらしいです。今日取り上げるのは、1969年に吹き込んだ彼女にとって2枚目の作品です。
僕はこれを1990年に買ったのですが、当時は欧州ジャズには関心が無く、この作品のバックを務めるメンバーの名前を見ても何も思わなかったのです。10数年経った今では、ルイス・ヴァン・ダイク(p)のトリオにルディ・ブリンクが加わったメンバーに、興味津々といったところです。
女性ヴォーカル作品として、バラッド作品集として、実に秀逸な作品なのです。解説で青木啓氏が彼女の魅力を、幾つかのポイントをあげて評しておりますが、僕が激しく同意したのが「その歌唱に淡いセンチメント,哀愁の美しさをにじみ出される」という件です。また青木氏は続けて、「そのセンチメントは暗く沈みこむのではなく、人間的な暖かさと懐かしさを持っており、これが日本人の感性に強くアッピールする」と述べている。流石に評論家は、上手いフレーズを並べるものですね。
圧巻は、「the shadow of your smile」でしょうかね。文句無く、この曲の歌版の筆頭格でしょう。またオーティス・レディングの熱演で知られる「try a little tenderness」では、オーティスのそれとは打って変わって、バラッドの極みを聴かせてくれてます。
バックの好演とあいまって、永らく日本で売れ続けている作品であります。