2004年9月2日掲載
Sunny Murray         Live At Mores-Festival
Mores Music原盤     1979年6月録音

何と4年4ヶ月振りに再開となる、デイヴィッド・マレイ特集です。

 当時までのリーダー作品は全て掲載を終え、WSQの作品を取り上げている途中で、突然の特集中断となったのでした。思い出してみると、1年少々の連載期間中は、マレイばっかり聴いていた感じでした。それは、楽しかったんですよ。それまでの16年間に買い集めたマレイの作品を、録音時期を追って体系的に聴いていったので、新たな発見もあったりしてね。しかし正直言って、最後のほうはトゥー・マッチの気分になっていた。それからの期間は、マレイの新譜は買い続けていたけれど、マレイ特集を再開しようと思いながらも、なかなかその気になれなかったのです。その間に住む所は、塩山からペナン、そして香港へと変わっておりましたけどね。

 今回の香港内での引越しの際にCDを整理してたところ、何故か再びマレイに心が動き出しました。恐らく、サイド参加等で、あと40枚ほどあるのでしょうか。今回の特集再開にあたっては、徐々に小分けしながら、また録音時期にも厳格に拘らずに行っていきます。本来ならWSQの続き、或いは連載中断中に発売されたマレイのリーダー作品を取り上げていくべきでしょう。しかし、今の気分に素直に従い、サイド・マンとしての参加作品を取り上げます。

 やたらと前口上が長くなりましたが、先ずはサニー・マレイの作品であります。

 このコーナーでサニー・マレイを取り上げるのは初なので、簡単に経歴を。1937年にオクラホマに生まれたサニーは、1956年にNYに進出し、1959年からセシル・テイラーのグループに入り、脚光を浴びました。その後スカンジナビアでアルバート・アイラーに会い、ゲイリー・ピーコックを加えて1964年にトリオを結成。その後も、コルトレーンやドン・チェリーなどとの共演を重ね、1968年にはパリに活動の場を移しました。そして、1970年中頃にNYに移り、ロフト・ジャズの中心人物になったのです。

 そして、そのロフト・ジャズの中で二人のマレイが出会ったのです。ロフト・ジャズの素晴らしい記録として、ダグラス・セッションがあります。1976年5月に10日間行われたセッションであり、その内容は WILDFLOWERS といタイトルで5枚のLPが発売されました。入手困難なLPなのですが、1999年にCD3枚組で復刻されております。その中で、デイヴィッド・マレイはサニー・マレイのグループとして2曲演奏しております。

 それに関しては気が向いたらここで取り上げるとして、今日取り上げる作品は、それから3年後のものであります。当時の西ドイツにあった Moers Music というレーベルが主催したジャズ祭りでの、ライブ録音です。Malachi Favors(b,per)とCheikh Tidiane Fall(cong)という、サニー・マレイが当時率いていたトリオとの演奏です。

 サニー作の4曲が演奏されておりますが、その中に「sweet lovely」という曲があります。これは1980年にデイヴィッド・マレイが「solo live」(1999/8/22)で取り上げ、その後度々演奏している曲とは、同名異曲であります。

20040902

 サニー・マレイのトリオは、考えてみればドラム,ベース,そしてコンガ。さて、この編成で普段どのような演奏をしているのでしょうかね。このライブ盤での演奏を敢えてデイヴィッド・マレイ抜きで語れば、ベースとドラムのコラボレーションであり、コンガは時折顔を覗かせる感じ。ベースのフェイヴァースはスピリチュアルで力強さを感じさせるけど、サニーのドラムは上滑りに感じるもの。

 しかし、ボリュームを上げてみて、上滑り感は消えました。ドラムの録音が良くないのですよ。シンバルを強く録ってあり、その他は少しこもる録音であり弱めのもの。この点を差し引けば、サニーの株が少し上がるが、それでもフェイヴァースに負けている感じがしますね。

 さて、デイヴィッド・マレイ。曲調に合わせて彼独特のサックスを披露していますが、どこまで突っ込んで演奏してよいか迷っている部分を感じさせます。

 どちらのマレイに絞って聴いても、及第点だが大満足とは言えない内容です。