ボブ・シールが用意したマッコイ・タイナーのリーダー作です。しかし、このレッド・バロンというレーベルは、知名度が低いですね。この時期のマッコイの録音状況を求めて、ネット上の幾つかのページを見たのですが、このレッド・バロンへの吹き込みは記載されていないページが多かったです。僕自身を振り返っても、発売当時は一切このレーベルを知りませんでした。渋谷ジャロさんには輸入盤を扱う問屋から常に情報が入っており、マレイ参加作品は無条件で確保してくれていたのですが、このレッド・バロンの作品群の情報は入ってなかったようです。発売から数年して中古でジャロさんに出回り、ジャロ店主と僕がこのレーベルを知るようになったのです。想像ですが、一部のルートでしか日本へ入ってこなかったのでしょうね。
話を本盤に戻しますが、参加メンバーはマレイの他には、ブライス(as),カーター(b),そしてアーロン・スコット(d)です。マレイはクレジット上は、6曲中3曲の参加となってます。しかし、管はブライス1本とクレジットされている3曲中の1曲「Falling in Love with Love」は、マレイが吹いていたと記憶しております。何分久し振りに聴くものですから、記憶間違いかもしれません。その辺りも注意深く聴いてみます。
レッド・バロンの録音は酷いもので、高音偏りペラペラ音なのです。ピアノの魅力は台無しになり、マッコイが絶不調に聴こえてしまう。これはサックスにも言える事だが、サックスについては少し書こう。
コルトレーン作の「ベッシーズ・ブルース」でのマレイとブライスは、軽くジャブの応酬と言ったところ。エリントン作の「ブルー・ピアノ」では、マレイの貫禄バラッド演奏が聴けるもの。そして、「フォーリン・イン・ラヴ・ウィズ・ラヴ」はやはりマレイの演奏であり、良質の演奏が聴ける内容。組曲であるタイトル曲は、マッコイの力作であり、マレイはオミット。これまで目だってなかったブライスの面目躍如の演奏が聴けます。
しかし、どのメンバーに焦点を当てても、この作品を佳作と呼ぶのは躊躇する内容であります。