2004年8月28日掲載
Don Rendell - Ian Car     Phase Ⅲ
Columbia原盤                1968年2月録音

 このグループはイギリスで人気を博していたようですが、作品の発表ペースは遅めですね。1作目と2作目が1年半の間隔、更にこの3作目までに2年の間隔があるのです。メンバーは2作目と同様。クレジットを眺めると、収録曲に若干の変化ありです。レンデンル作が1曲に対して、カー作が3曲となっており、前2作とは異なってます。

 対した問題ではないのか、或いは二人の力関係に変化が起こったのか、少なからず興味が湧きます。

20040828

オーソドックスな前2作に対して、アヴァンギャルドなこの3作目です。カーのトランペットの尖がり具合が光っている内容です。「crazy jane」「on!」での激しさ、「les neiges d'antan」での静寂さの中で、新しい時代のジャズを切り開いていく姿が聴き取れます。

 ここで、カーの略歴を。1933年イギリス生まれのカーは、12歳からピアノを始め、その後トランペットも始め、大学で英文学を学ぶ間もトランペットを続けておりました。1956年から2年間兵役となり、除隊後にはギグもするようになり、1960年から2年間は弟のピアノ奏者マイクとエムシー・ファイヴを結成しました。その後、ロンドンに主戦場を移し、やがてレンデルと知り合い、今回紹介している活動に繋がっております。

 話を本作品に戻すと、レンデルのサックスの美しさが、カーとは対照的でありました。この対比の中では、カーの盛り立て役のサックスと映ってしまう場面も多かったですね。それと、アヴァンギャルドな展開の中で、ピアノ・ベース・ドラムが前2作より存在感が増しております。その意味では、クィンテットとしてのまとまりの良さがあると言えるでしょう。

 前2作の感じを他の作品でも聴きたかったのですが、アメリカとは違った独自のジャズを築いていく過程の欧州では、致し方ないことなのでしょう。