ミッシェル・サダビィをここで取り上げるのが初めてだと気付いたのですが、僕の好きなピアニストなのです。
フランス領マルティニーク島に1935年に生まれたサダビィは、5歳からピアノを始め、1947年にNYに渡ったらしい。しかし1953年頃にはパリに戻り、それ以降はパリを拠点に活躍している。
彼にとって4枚目の本作品は、タイトル通りNYで吹き込まれたものであり、活動場所としてNYを度々訪れていたのであろう。
リチャード・デイヴィスとビリー・コブハムとの録音である。
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1990年にセンチュリー・レコードから復刻された盤を持っているのだが、Gコレクションと称してマイナー・レーベルからの美味しいそうな盤を、この会社はこの時期に復刻していたのだ。
このセンチュリー・レコードに興味を持って調べてみたら、かつては演歌中心の会社だったようだ。しかしながら、1980年代半ばに大黒柱だった八代亜紀に去られてからは、ジリ貧の道を辿ったのだ。
会社存続を洋楽部門にかけたセンチュリーは、ジャズ盤復刻である程度の成果を出した後、ポップスでも同様の手法によって、その存在感を示していた。現在の活動は不明だが、ポニー・キャニオン傘下になっている。
さて、このサダビー盤の内容であるが、カリブ海出身の天性の明るさを感じさせる躍動感あるピアノであり、アップ・テンポの曲でその特徴を堪能出来る。しかし、それよりもサダビィの特徴は、歌心であろう。マイナーのスロー曲「someone came into my life」での、彼の歌心が実に印象的だ。コブハムに華を持たせすぎた部分も一部にあるが、清清しい好盤と言える内容である。
八代亜紀次第では入手出来なかった作品ではなく、センチュリーが手を出さなくても、復刻されたに違いない作品だ。