アーマッド・ジャマルの代表盤というよりは、ピアノ・トリオ作品の名盤と言った方がいいこの作品がCDで発売されたのは、CDがこの世に登場してから随分と年数が経過した1997年のことでした。
当時の僕は、実家と塩山にそれぞれオーディオを持っており、この盤は実家に帰る度に繰り返し聴いていた記憶があります。しかし次々にCDを購入していく中で、この盤は主役の座を他の盤に譲っていき、やがてはどこに収納したのか分からなってしまったのです。聴きたくとも聴けないもどかしさを感じておりましたが、今回の実家建替えによって、ようやく発見された次第です。
アーゴ/カデットに22枚の作品を残しているジャマルの作品群の中で、この作品はトリオとしては3枚目にあたるものです。彼の主戦場であったシカゴの有名ライブ・スポットである、パーシング・ラウンジでのライブ盤であります。
この時代の作品を取り上げた際に書いたジャマルの魅力は、間の取り方。その真髄が、この盤に凝縮されています。また、マイルスが彼を参考にした話も、既に書いてしまった。
そこで、少しばかり疑問点を書いてみます。全8曲ですが、平均3分ほどの演奏時間ですが、これは短すぎないのかと感じます。ジャマルのメロディの提示の仕方,間の取り方,そしてトリオの息が合っている様子を楽しみ始めたところで、演奏が終了してしまっております。
演奏時間8分の「poinciana」が唯一の長い演奏時間なのですが、全く飽きなど感じさせない演奏であり、演奏後の拍手の様子からも観客の反応も同じであります。
そしてもう一つの疑問点が、この作品がバカ売れしたこと。コマーシャルな要素など全く感じさせないこの盤が、ビルボードの総合チャート3位になるとは信じられない。
国内盤の解説を書いている児山紀芳さんは、この作品に関して詳しく書いておりますが、このバカ売れしたことに関しては、その事実の提示だけに留まっております。