2004年4月19日掲載
George Robert       Soul Eyes
Mons原盤              2000年5月録音

 ジャズ・サイトを運営している方から教えて頂いたアルト奏者の作品です。ジョージ・ロバート或いはジョルジュ・ロベルトと呼ばれている方です。

 ライナー・ノーツに書かれている彼の経歴を、簡単に紹介しましょう。

1960年にスイスのジュネーブで生まれ、10歳の時に何か賞を取ったよう。

1983年には自分のグループでモントレー・ジャズ祭りに加。

1985年から2年間に渡りNYで演奏。

1987年から5年間に渡りトム・ハレルとのクィンテットで活動。

1989年にはクラーク・テリーと米欧で楽旅を行い、また4枚の作品を残す。

1991年には自分のバンドで4ヶ月間16カ国で演奏。

1995年にはスイスのジャズ学校で教える。

1997年にMonsレーベルにデュオ作品(Youngbloods)を吹き込む。

1998年に、フィル・ウッズのオーケストラに参加。

2000年に、ウッズ,バロン,ルーファス・リード(b),ビリー・ドラモンド(d)或いはアルヴィン・クィーン(d)と楽旅。

 今日取り上げる作品は2000年のツァーとのメンバー(ドラムはクィーン)と同年に吹き込んだ作品であります。ローザンヌでのライブ録音です。

20040419

 熱きハード・バップの秀作,特に管楽器でのそれに、滅多にお目にかかれない現状なのです。この作品が注目されている理由として、滅多にお目にかかれないモノにお目にかかったという点があげられるでしょう。何故に滅多にお目にかかれないかと言えば、熱きハード・バップを繰り広げたいとの志向がミュージュシャン側に無いからだと、考えておりました。

 しかし、この作品を聴き終わった今考えているのは、熱きハード・バップを繰り広げるには、特殊才能がいるのではないのかということです。勿論ミュージュシャンは特殊才能の塊なのでしょうが、今の時代に熱きハード・バップというのは、そう簡単に出来るものではないのではと考えた次第です。

 そんな中で、このジョージ・ロバートには、その特殊才能が溢れているのです。経歴からみたら、クラーク・テリーに基礎を叩き込まれ、ウッズがそれを開花させたというところでしょうか。前半の3曲は、5人の熱演に圧倒される40分であります。

 また、一部の方がロバートとウッズの音色がそっくりだと言われておりましたが、これははっきりと区別がつく音色であります。確かに同系統なのは間違いありませんが、艶が濃いのがロバートで、渋みがあるのがウッズであります。クレジット無しですので万が一逆の場面もあるのでしょうが、常に先発していることと演奏時間の長さから、まず間違い無いでしょう。

 次にその演奏スタイルですが、1950年代後半のパーカー系アルト奏者のようであります。それは熱気溢れる演奏からだけではなく、真ん中でのピアノ・トリオ演奏を挟んでの、後半のスロー・ナンバーからも伺えることです。「ソウル・アイズ」でのロバートの演奏を聴いていると、プレスティッジに残された数多くの綺羅星のようなアルト奏者の演奏に、しっかりと方を並べているものです。

 5人全員の熱演によって、現代熱きハード・バップ盤に好盤が加わりました。