2004年4月18日掲載
Francois Rabbath     In A Sentimental Mood
King原盤                  2003年1月録音

 低音シリーズの新作であり、「これは問題作」「ヨーロッパ・ベース界のカリスマ」などという宣伝に心惹かれて買った作品である。

 ラバトの詳しい経歴が解説に載っているが、短く纏めれば、1931年生まれでクラシックで経歴を積みながらジャズも演奏していた人。その経歴の華として、40歳を過ぎて突然オペラ座のスーパー・ソリストになったことがあげられている。

 スタンダードを20曲、ピアノと共に吹き込んだ作品です。

20040418

 「ジャズのベーシストがクラシックのスタイルで演奏したものでも、クラシックのベーシストがジャズのスタイルで演奏したものでもない」と解説にあるが、言い換えればそれまでのベーシストのベース本位で録音された作品のスタイルはこんなもんだったということなのか。

 またSJ3月号の藤本氏ののディスク・レビューには、「演奏されているのは有名なスタンダードや映画音楽ばかり。おまけにどれもピアノ伴奏に合わせてテーマをアルコで弾くだけで、アドリブはまったくと言っていいほどない。ところがその音楽が、凄いのだ、圧倒的に。」とある。この意見には納得。

 この後に藤本氏は、凄さの理由として「音の訴求力」をあげている。これを僕なりに言うとしたら、メロディの自然な提示力が、この作品を聴く者に訴えかけているのだ。

 有名な20曲が、短い演奏時間で続けられているが、それが一つの曲に聴こえてくる。ラバトに長年かけて染み込んだ数万のメロディの引出しの中から、この日に思い浮かんだメロディを取り出しているようである。それで作品として素晴らしいものにさせているものは、ミュージュシャンとしての志向の高さであろう。