エリック・クロスと言えば、1960年後半にプレスティッジに登場した尖った盲目のアルト・サックス奏者の印象があります。今日この作品を取り上げるにあたって文献を当たったところ、1965年にプレスティッジにおいてデビューしたとか。それも16歳という若さとのこと。
順調にレコーディングを重ねっていったクロスにとって、今日取り上げる作品は、二十歳の時に吹き込んだ8作目のリーダー作品ということになります。
ブッカー・アービン(ts),ジャッキー・バイアード(p),リチャード・デイビス(b),アラン・ドウソン(d)とのクィンテットでの録音であります。
クロスという人は吸収力豊かなミュージュシャンとの印象。この時に二十歳ということを考えれば、何にでも好奇心旺盛だったということかな。
白眉は「サマータイム」でありまして、様々な要素が加わった内容となっております。静から動への展開が見事であり、フリーの色合いも加え、また各楽器の特徴を存分に活かしているもの。そこでのクロスのアルトは、伸びやかであり勢いの良いものであります。
自作曲ではロックの色合いが出てきておりますが、識者のコメントとこの盤の内容を合わせて考えれば、16歳からこの録音までは、ジャズの王道をしっかりと身に着けた演奏内容と言えるのでしょう。