2004年2月16日掲載
Betty Roche       singin' & swingin’
Prestige原盤     1960年6月録音

 エリントン楽団に在籍した歌手で有名なのは、女性ではアイヴィ・アンダーソン,ジュア・シュリル、男性ではハーブ・ジェフリーズ,アル・ヒブラー,ジミー・グリッサム等なのだそうだ。ビッグ・バンドに感心が無い僕には無名に思ってしまうが、その筋の方々からは絶賛を浴びた歌手なのである。 そして今日取り上げるベティ・ロシュさんも、その中の一人なのだ。

 そして彼女のエリントン楽団への功績として語り継がれているのは、1951年に吹き込んだ「A列車で行こう」が800万枚も売れ、ジャズ界脅威のベスト・セラーになったことである。スターとなったベティは1950年代後半には独立し、西海岸で活動を始めたのだが、彼女のスタイルは西海岸ではあまり受けなかったようである。

 1960年に入って東海岸に移った彼女にプレスティッジへの吹き込みの機会を得て、この作品が出来上がったのだ。ギターとオルガン入りのクィンテットをバックにして、スタンダードを9曲歌っております。

20040216

 ビル・ジェニングスのギターがロシュさんの歌をリードしながら快適に進む「ビリーズ・バウンス」は、ロシュのスキャットが前面に出ており、全体の雰囲気からしても、いかにもビッグ・バンド出身歌手といったもの。

 このギタリストのビルがNYに出てきた彼女をプレスティッジに推薦したそうですが、「ア・フォギー・デイ」でのギターと歌との息もピッタリあったものです。

 また彼女の歌は、黒人女性の典型のそれに可愛らしさを加えてしっとり聴かせるもので、ブルースとバラッドに冴えるもの。「降っても晴れても」が、その真骨頂と言えるものです。その意味では「ビリーズ・バウンス」以外の曲では、ビッグ・バンド出身の姿を消して、ジャケット同様に姿が微かに浮かび上がる位の暗い照明の小さなライブ・スポットで歌っている感じのもの。

 プレスティッジへの吹き込みでなければ買わなかった作品なのですが、愛着の持てる作品です。