アート・アンサンブル・オブ・シカゴの作品は15枚ほど持ってますが、ここで取り上げたのは1枚だけでした。理由はLPが多いということと、彼等の演奏へのコメントは難しいという思いからだったのでしょう。
1995年録音の作品でコメントしましたが、ジョセフ・ジャーマンがこの時点で脱退しておりました。そして、1999年にはレスター・ボーイが死亡したのです。残ったロスコー・ミッチェル(reed),マラカイ・フェイヴァース(b),そしてドン・モイエ(d)の3人は、3人で活動を続けていくことを決意したようです。そんな中で、レスター・ボーイへ捧げた作品が、昨年発表されたのです。
gその意味では新譜に近いこの作品なのですが、これが金鐘のレコード屋さん香港唱片に置いてあったのにはビックリ。これを買う層は、どちらかと言えばジャズ・マニア。香港唱片はマニア対象の店ではないのです。この作品を普通に店頭に出すためには、香港唱片のジャズ・コーナーの広さが、あと15倍は必要なはず。HMVのジャズ部屋のようなところに置かれる作品なはず。これは、仕入れ担当者の好みなのでしょうかね。しかし、この系統の新譜が他に無かったことから、仕入れ担当者の好みとは言えないでしょう。
こんな思いは置いといて、AEOCを聴いてみます。
ドン・モイエの打楽器を軸に想像世界を作り出していく展開と、ロスコーが端麗な響きを轟かせる展開が、この盤の主軸になります。今までの3管会い乱れての幻想世界からの転換が、この姿なのでしょうか。ロスコーに新たなAEOCの姿を見せた1枚と言えます。この盤は前述の魅力で1時間を飽きさせずに聴かせますが、今後の展開に手詰まりになるのではとの予感を抱きました。さらにマラカイ・フェイヴァースの今年1月の逝去は、更なる試練をAEOCに与えたことになります。