このフランシス秘蔵のパウエル集は、CDとLPでの発売で、夫々10枚に分かれておりました。CDはバラ売りでしたが、LPはボックス・セットとバラ売りの2種類での発売で、しかもボックス・セットにはシリアル・ナンバー入りになっておりました。
そして肝心なポイントが収録曲。基本的には10枚とも同じ曲なのですが、3曲ほどはその内容がCDとLPで異なるというものでした。そんな売り方を可能にしたのも、フランシスとパウエルの交友は有名なものであり、フランシス所有のテープを聴いてみたいという欲求は、ジャズ・ファンの間で長年に渡って高いものだったのでしょう。
そんな意味ではこの第4集が、皆が待ち望んだモノと言えるでしょう。1961年から1964年までの間にフランシスのアパートで演奏されたパウエルの演奏が、21曲収録されております。
鼻歌というか唸り声というか、とにかくそんなパウエルの声が被さるピアノ・ソロ演奏であり、クリスマス・ソングまで歌ってしまっている。心許せる友の家だからこそのパウエルのリラックスした姿であり、超テク神様パウエルの姿はそこにはない。しかし良い演奏だ。
1960年代のパウエルを日頃は愛聴していると告白するパウエル・ファンが多いのであるが、この盤にはリラックスしたパウエルの凄みが凝縮されている。特に「in the stage door canteen」と「darn that dream」での演奏は、一つのピアニストが到達すべき頂点が伺える。気軽な気持ちで楽しく何気なく弾いたピアノが、構えることなく聴いている者の心を直撃しているのだ。
友情が滲み出ているジャケットの写真は、数多くあるジャズ盤ジャケット写真の中でも、秀逸のものである。上述の演奏の内容から有名なジャズ・ストーリーまで、この写真に凝縮されている。この第4集は、是非ともLPでも買いたかったな。