渋谷ジャロさんではこのパウエルの発掘発売の知らせを、高価なオリジナル盤が展示されいる壁に、ポスターの裏紙を使って告知しておりました。そこに「音質最高。店主試聴済み」との文句があったのです。
10枚中のどの盤かは忘れましたが、日本の輸入元から1枚試聴CDが数日間貸し出されたのです。通常はCDプレーヤーを置いていないジャロさんですが、ディスク・マンをアンプに繋いで試聴したとか。その際には、件のアルバイト青年も一緒だっとか。試聴結果の「音質最高」の文句は発売開始までの命だったのですが、その辺りはまた後日。
さてパウエルなんですが、1957年から1958年というのは、ブルーノートに好調作品を3枚吹き込んでおります。「バド!」「タイム・ウェイツ」「ザ・シーン・チェンジ」がその3枚です。今日取上げる第3集には、パリで1957年に録音された3曲が収録されており、時にはパリに行っていたことになりますね。
本格的にパリに移るのは1959年なのですが、この第3集には11月7日に録音されたのを中心に収録されております。Pierre Michelot(b),Kenny Clarke(d)とのトリオが5曲、それにBarney Wilen(ts)入りが3曲、Clark Terry(tp)入りが1曲、WilenとClarkの両入りが3曲となっております。まだこの時期は、フランシスとパウエルの交流は始まっていなかったのかな。
それと、ここに書いているのはジャズ人名辞典からの内容が多いのですが、そこには奥さんと息子を伴って1959年に、パウエルは渡仏したことになっている。映画では、そんなシーンが描かれておりましたっけね。
憂鬱な1957年の3曲、明るい1959年と色分けされる内容です。ホーン陣の好演もあり、またクラークの二本の手で叩かれているのが信じられないドラム演奏に乗って弾きまくるパウエルに軍配が上がったかの思いで聴き終えました。
しかし、後になって頭の中に残るのは1957年の3曲、特にソロで演奏されている「バド・オン・バッハ」です。パウエルとバッハの結びつきには詳しくないのですが、この1957年のパウエルの心の中が全て詰まっているような1分間の演奏です。この1曲だけでも、この盤は価値有りですよ。
ジャケの写真では、明るい1959年のパウエルの様子が伺えるものになっております。