ここ2ヵ月ほどの愛聴盤の一つが、ベテラン・ピアニストであるジョン・テイラーの新譜である「Rosslun」である。極限の美意識と緊張感が味わえる作品であり、欧州ピアノ・トリオ作品群のスピリッツを凝縮した内容である。もう1年以上前から食傷気味になってきていた欧州ピアノ・トリオの新譜ラッシュに対して、付き合って行く気分を完全に粉砕してしまったテイラーの新譜と言えよう。
さてそこでも書いたのであるが、ジョン・テイラーと言えば、今日取上げる「覚醒」なのである。そしてここで取上げたつもりになっていた作品であり、CDの本格整理を行って見つけ出した作品なのだ。
1942年にマンチェスターの音楽一家に生まれたテイラーは1964年にロンドンに移り、当時のイギリス・ジャズを背負っていた、また背負うことになる様々なミュージュシャンと演奏活動を行っていた。1971年に自己のトリオを結成し、吹き込まれたのが本作品である。
クリス・ローレン(b)とトニー・レヴィン(d)とのトリオ作品であり、欧州ジャズを代表するピアノ・トリオ作品である。
この録音時点ではクリームは解散していたのだが、攻撃的な三位一体の演奏という感覚において、この作品はクリームのそれを思い出させる内容である。1960年代後半のイギリスには若者が新たな文化を急激に模索していた時代であり、ロックに流れる人とジャズで表現しようとする人にここでは分かれるのであろうが、根の部分ではお互いに共通の激しさがある。
そんな時代の傑作と、この作品は言えよう。