ヨーロッパで活動していたゴードンが、パリで吹き込んだ作品です。バックには、同様にヨーロッパで活動中のケニー・ドリューにアート・テイラー、そしてフランスに留学中であったドナルド・バード、それにニールス・ペデルセンが加わっての、クインテットで吹き込まれたものです。
ゴードンの数多くの作品の中では語られることが少ない作品ですが、バード作の「タニヤ」の名演奏は有名なものですね。
欧州に移ってからゴードンがBNに吹き込んだ最初の作品は、「アワ・マン・イン・パリ」でありまして、これはそれまでのゴードンの姿が忠実に現れた演奏でした。
欧州2作目の本作品は、ジャズの流れが変わってきた1960年代の状況に対して、ゴードン自身が解答を出した内容であります。
とにかく哀愁メロディの「タニヤ」で聴けるゴードンの演奏は、それまでのゴードン節に対して、凹凸を取っ払ったようなもの。モード旋風の中において、多弁にならず縦横無尽にゆったりと漂う演奏を、彼は見出したのでしょうかね。またバードは作曲の勉強でパリに留学しており、その成果がバード作の「タニヤ」で結実しております。
ピアノのドリューも絶好調であり、この後のドリューの名盤に欠かせないベーシストであるペデルセンとは、この作品が初共演とのこと。
「アワ・マン・イン・パリ」の影に隠れた作品と言えますが、その内容の充実度には高いものがありますよ。