オーディオ雑誌で、有名なオーディオ評論家が、立派な装置を構えている一般人を訪問し対談する企画がある。その際にジャズ・マニアが「バス・ドラの音は腹にドスンと響いて欲しい」という発言が時折あるが、本当にジャズを生で聴いたことがあるのかと、僕などは思ってしまう。ドラム・セットのまん前で聴くなら別であるが、ライブ会場で腹に響くバス・ドラなど聴いたことが無いな。PAで音圧だけ凄まじいロックのコンサートと、勘違いしているとしか思えないのですがね。
オーディオは再生音楽だから、そこに何を求めようと個人の自由である。原音再生などという青恥ずかしいことは僕は思わないが、こういう再生音を望んでいると言い切れない僕よりは、「バス・ドラの音は腹にドスンと響いて欲しい」と言い切れる人の方が、立派なのかも知れませんがね。
やはり、音楽好きが高じてのオーディオ・マニアであって欲しい。雷鳴のような轟音を再生して喜んでいるオーディオ・マニアには、なりたくないね。
さて、この盤。2年以上前に発売されたものであり興味を持っていたが、「雷鳴のような轟音」を喜ぶのと似ている気がして、購入を躊躇っていた作品である。キングが低音シリーズと称して、ベースが主体の作品を何枚も世に出しており、このブライアン・ブロンバーグの作品も、その中の一つである。
今回何故購入したかと言えば、ジャズとしても内容が充実しているのではと、未だにコンスタントに売れている状況から思ったからである。
ランディ・ウォルドロン(p)とデヴィッド・ブロンバーグ(d)とレコーディングしており、トリオでの演奏は勿論のこと、デュオやベース・ソロでの演奏も収録されている。
本盤の優れている点として、優秀なピアノ・トリオ作品であることがあげられよう。
「goodbye」はベースとピアノのデュオであるが、哀愁感が心地よい加減で演奏されているピアノであり、ベースも時には盛り立て役であり時には主役に回って、素晴らしい演奏となっている。
続くトリオ演奏の「speak low」での、トリオとしての疾走感は快感ですらある。このことが土台となって、本作品の目玉であるベースの骨太演奏が、大いに効いてきてるのである。
ベースがトリオに溶け込みながらも、しっかりと存在感を示しているのが、ジャズ好きとしてもオーディオ好きとしても、大きな満足感を得られるものに繋がっているのだ。
僕のSPはB&WのN804。小さいながらも強力な磁気回路のウーファーが搭載されているそうで、アンプに対して十分なパワーを要求するもの。アンプは価格的に購入を迷ったマークレヴィンソン383であるが、ブロンバーグのベースをココまで気持ちよく演奏してくれるのだから、改めて購入したことを喜んでいる。
今後も、ジャズとしてオーディオとして満足出来る盤に巡り合いたいたく、ジャズ盤買いを続けていくことだろう。