総額280万円のオーディオというのはマニアの方にとっては可愛いモノなのであろうが、音楽好きがもっと良い音と欲張って払う額としては高価なものである。賃金水準が低い業界で好き勝手やって働いている雇われ人にとっては、280万円は大金なんだな。今使っているオーディオ・システムに至った過程は、このコーナーで書いているので省略するが、欲望と偶然と無鉄砲が重なって、購入していったシステムなのだ。しかし、後悔は一切していない。逆に、日々買ってよかったと思ってきている次第である。
いい年をしての一人身は自慢できるものではないが、時間はたっぷりと個人のことに使える良さはあるよね。特に海外での一人暮らしなので、日本にいるよりも行動に制約があり、僕の場合はジャズ聴きに多くの時間を割いている。その中で、日々オーディオの音が良くなっていくのに、驚いている状態である。
音楽好きでないオーディオ・マニアは勘弁して欲しいが、音自体に興味が湧いてくるのに、自分自身驚いている。
さて、このパット・メセニーの新譜。バリトン・ギター1本で吹き込んだ作品である。馴染みのない楽器であるが、カナダ人のリンダ・マンツァー作のもので、チューニングもマンツァー氏自らメセニーのために行ったそうである。僕がこの盤を買った理由は、アコースティック・ギターの音色を存分に僕のオーディオ装置から響かせたかったからである。
バリトン・ギターと呼ぶのだから、通常のアコースティック・ギターより低い設定になっている。パットのテクニックなのだから、洪水のようにいろんな音がフレーズが、時には静かに時には激しく飛び出してきても驚きはしない。との思いで聴き始めてものの、ここまで圧倒的だと、それだけで感心するね。またオーディオにとっての大切な要素である部屋についても、音の吸収と空間量自体の少なさを実感させられた。
ボーナス・トラックが入っている国内盤を購入したので70分の演奏時間であるが、飽きることなく聴き続けられたのは、上述の2ポイントだけからだけではなく、メロディの優しさによるものだ。いろいろな観点から楽しめる1枚であり、ジャズ作品の中では稀な作品でもある。