2003年1月14日掲載
Pete Malinverni    Autumn In New York Reservoir原盤     2002年6月録音

 5年目に突入した「今日の1枚」なのですが、印象に残ったミュージュシャンという意味では、このマリンバーニさんが筆頭格でしょうかね。開始から45枚目で取上げたのが「a very good year」であり、その後このコーナーが新譜中心になっていくキッカケになった作品と言えるものです。最新の彼の演奏を楽しみたいと思います。

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 楽器の構造及び録音技術については、聴く側だけであり専門知識を持ち合わせていないので何ととも言えませんが、ここでのピアノの録音はベルベットのジャケットを被せたかのよう。

 しかし、これが効果的。ベースとドラムはクリアな録音なだけに、録音エンジニアのジム・アンダーソンの作戦なのかな。

 どう効果的かと言えば、高音のシングル・トーンが全体的に多用されているピアノなのですが、それが柔らかく気持ち良くスピーカーから流れてくるんだな。

 まず、オリジナル曲から話をしようか。「contemplative」では、この高音にマリンバーニ独特の間が加わり、闇夜に象が歩いているような印象。こう書くと悪いように感じられるかもしれないが、そーではない。見たこともないような情景がはっきりと映し出される、マリンヴァーニの演奏なのであって、「闇夜の象」は僕の想像力不足だからね。

 「elegy」でも高音と間が寂しいメロディが、一層効果的になっている。

 スタンダードでは「too close for comfort」の焦らしが最高だね。サビの盛り上げ個所を、さらっと流している。肩透かしをくらった気持ちだが、2度目3度目には、気持ち良くなってくるから変なもんだ。

 白眉は「in love in vain」かな。ピアノ・トリオでこの曲とくれば、エヴァンスとキースであり、他のピアニストは話題にのぼらない曲。マリンバーニはマリンバーニ節をこの曲で指し示し、「in love in vain」の代表ピアニストの仲間入りといった塩梅。もちろんそれは、独特の高音と間によってのことですよ。