「サヒブ・シハブがそんなに有名なのかと問いたい、サヒブ・シハブの作品の復刻をそんなに待ち望んでいたのかと問いたい」、という強い思いを抱いたのは、1年前にこの作品がLP復刻され飛ぶような売れ行きと、「待ってました」という多くの声に触れた時でした。
1950年代の作品のサイドに彼の名前を目にすることはあっても、この復刻に対しての熱狂は信じ難いものが僕にはありました。
1925年にジョージア州に産まれた彼は、1938年にはプロ入りし様々なバンドで活動した後の1947年にNYに進出し、1950年代初頭にはモンク,ダメロン,ガレスピー等との共演を重ねておりました。1959年にクインシー・ジョーンズ楽団に入り欧州を楽旅し、その後欧州に残り1960年から1974年まで欧州を活動の舞台としておりました。
この作品はそのころのもので、デンマークのラジオ局でのセッションの模様だとおもいます。ジャケで分かる通り何本もホーンが入っている編成です。この作品を知らなかったのは僕だけか、はたまた日本ジャズ・ファンの過剰反応なのか、如何なのでしょうか。
独特のリズムと間を持ったマイナー曲「di-da」、出だしが強力なベース。バリトンとサックスがテーマを受け持った後には、ベースにシンバルが重なって全体を支配していき、憂鬱な曇り空を描いたかのようなホーン・アンサンブルが流れていく。5分ほどの演奏時間ですが、これだけの編成と良いアレンジがあるわけですから、20分の演奏でも充分出来たのでは。
シハブの演奏自体も重きフレーズが魅力的で良いのですが、彼がこの作品で賞賛されるべき点は、この内容を纏め上げたことでしょう。ペデルセンのベースにアレックス・リールのドラムと、現代の欧州ジャズ・シーンの重鎮が名を連ねていることも、この盤は現代においての評価の対象になるのでしょう。
まだまだ奥深い、というか奥が無いジャズの世界を実感した1枚でした。