2002年4月6日掲載
Vinson Hill      his Trio
Savoy原盤     1966年4月録音

 昨年サヴォイのレア盤が多数発売された中の1枚。

 ビンソン・ヒルというピアニストのトリオ作品です。日本のコレクターとして名を知られている方々が多数関わったジャズ批評別冊「ピアノ・トリオ1600」にでさえ、ジャケ写無し、「本当に発売されたのか」とのコメントがあったことからも、この作品のレア度が分かることでしょう。封入された解説を書かれた方は、この作品のオリジナルを所持されているとか。ジャズ批評軍団真っ青ってとこでしょうかね。

 さて、ビンソン・ヒル。生まれは1920年頃、学生時代はクラッシク・ピアノを勉強されてたとか。海軍時代にジャズを演奏していたかは分かりませんが、その後はホテルなどで演奏しながら、大学でジャズ講義を行っていたとか。

 この作品は40歳半ばに吹き込まれたものです。

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 饒舌ではなく、間を大切にするピアニスト。ジャズとして滅多に取上げられない素朴ながら面白いブルースを引っ張り出す辺りは、博識な様子が伺えるもの。

 3分ほどの演奏時間の曲を7つ並べたとこまでは良かったが、戴けないのが10分近いラストの「rubato jazz」。実験的というかフリーというか、兎に角ビンソンのピアノ・スタイルに全く合っていないもの。考えと演奏が、乖離したジャズの典型ですな。録音は1966年、時代はフリーなので、それに迎合してしまったのでしょうね。

 30歳台の1950年代に、是非とも録音を残して欲しかった人ですな。