引き続き、サヴォイのレア物。
ビル・バロンはテナー・サックス奏者で、1927年生まれ。フィラデルフィアのローカル・バンドで活動した後、31歳の時にNYへ進出。テッド・カーソンと双頭バンドを結成し、またセシル・テーラー等と共演することで、遅咲きながらサヴォイに吹き込みのチャンスを得たのでした。数枚サヴォイに録音したそうですが、これが代表作とか。テッド・カーソ(tp),ジミー・ギャリソン(b),フランキー・ダンロップ(d)という、既にジャズ・シーンで有名な方々が共演しています。そして、ピアノには、兄を頼ってNYに出てきた当時17歳のケニー・バロンが参加しております。
そう、ビルはケニーのお兄さんなのです。
「トランジションのオーナーとして名をはせたプロデューサー、トム・ウィルソンならではのプログレッシブな傑作」と帯びに書かれているが、最後の傑作を除けば、内容はその通り。
また日本語解説にゴードンやジョー・ヘンのようなテナーと書かれているが、実に的を得ている表現。ゴードンについては吹きっぷりが似ているし、フレージングはヘンダーソンです。しかし内容的には、モードやフリーと言う時代の流れに乗りながら、深い考えが無いのだな。
この後ビルは、1969年からミューズに作品を吹きこみながら、主としてジャズ教育に軸足を移し、1988年の吹き込みを最後に、翌年永眠したそうです。亡くなる直前に演奏を聴きたい気分になってきたのですが、今回取上げた時代に合わせた演奏ではなく彼の本音が出ているのではとの思いからでしょう。