僕は日本のジャズを嫌っているわけではなくて、それよりも聴きたい作品が他に多くあるだけなのです。
このコーナー100枚目で取上げた山下洋輔は、数少ない購入対象にしていたことのある日本のミュージュシャン。しかしそれは、ヨーロッパで評判になったフリーなトリオではなく、100枚目で取上げた作品から5枚ほどのこと。
今日の主役の森山威男は、フリーなトリオ時代のドラマーです。本来なら購入対象ではないのですが、食指が動いたのはガゾーンの参加があるからです。他にピアノとベースが参加しているのは当然として、ガゾーンと同楽器のオトガワっていうのが参加している。これが気がかり。
ガゾーン一人で充分だろうというのが、聴く前の本音です。
切なさ漂うバラッドを集めた作品。真摯に吹いているガゾーンを筆頭に、かなりの熱演。
しかし、あくまで主役は森山のドラムだ。全編に渡って彼のドラムが、素晴らしい録音で響いている。とくにブラシによる演奏は、ブラシの動きまでリアルに伝わってくるもので、かつて聴いたあらゆる作品の中でも、特筆出来る録音になっている。
素晴らしい作品であるのだが、その頂点は2曲目の「gratitude」、その7分からの40秒間である。彼のドラムはあくまで調和のとれた中での演奏なのだが、ここの40秒間は全てをぶち壊す迫力があるもの。勿論、キワモノと感じられるものではないので、作品としてかなり高いレベルで結晶しているぶち壊しだ。
しばらくは、愛聴盤であり続ける作品である。