1999年5月8日掲載
Yosuke Yamashita    it don't mean a thing
DIW原盤                1984年2月録音

 このアルバムには思い出が一杯あります。最初に買ったCDであることが第一かな。CDというメディアが世に出た頃、友人の家で、確かマドンナのCDを聞きました。最初の1曲位はレコードに比べてのCDの良さ、クリアでダイナミックでスクラッチノイズが無いことを実感できたのですが、聞き進むにつれて耳が疲れてきてしまいました。全体的にキンキンしている感じだったので、CDに対して興味を抱きませんでした。それから2年間後に聞いた時は音の改善にびっくりし、いやでもこれからはCDの時代になると考え、CDプ レーヤーを購入し、このアルバムを買ったのです。第二にそれまで山下洋輔と言えば、1970年代のフリー演奏が頭にあったため、ここでのソロ演奏に対して驚きを抱きました。その内容は明日書きますが、私が一番回数多く聞いたアルバムの1枚なのです。またピアノソロで愛聴盤と言えるのは、モンクのやつとこれだけですね。また日本人ジャズマンのアルバムで聞き込んだ物としては唯一ですよ。週末の夜、じっくり聞きます。

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 テーマとアドリブとの関係と言えば、テーマを演奏した後にそのコード進行で自由にメロディを演奏し、またテーマに戻り演奏を終了する、単純に言えばこうなるでしょう。このアルバムでは、テーマを弾いた後にそのテーマを分解し壊して行く。そしてそれを再構築してテーマを組みたてていく風になっています。モンクのソロアルバムにも同様な感じですね。山下洋輔は15年前の2月の深夜に新宿の ピット・インで、この8曲60分のライブレコーディングを行ないました。当然周到な準備を整えて望んだのでしょうが、いざ本番になればあふれ出てくる創造力で曲構成もどんどん変わってった事でしょう。それがジャズの魅力の一つでしょうからね。それにしても助けてくれる他の人がいないソロ演奏の中で、一貫して集中力を切らせないで演奏しているのは見事としか言えないですね。タイトル曲を始めとするスタンダードやオリジナル曲を、最高の緊張感で料理して行く山下の演奏を前にすると、聞くほうも60分間集中する必要がありますよ。 というか、嫌でも集中してしまいます。この後彼はNYのベースとドラムを入れてのトリオ作品を発表していきます。このアルバムからトリオ作品の2作目位までが、僕にとっての山下洋輔の絶頂期ですね。