テナーサックスというよりジャズ界の大物中の大物、デクスター・ゴードンの紹介です。彼のような大物でキャリアの長い人の代表作となると人により選ぶ作品は異なるでしょう。ある人は1940年代から1952年にかけてのテナー・バトルを繰り広げていた時期でしょうし、別の人は1950年代の麻薬禍による活動停止後に復帰し、ブルー・ノートに残された数々の作品でしょう。でこのアルバム、その麻薬による活動停止中に吹き込まれた数少ないアルバムの1枚です。まぁ、この“今日の1枚”は代表作を紹介する訳でも、名作だけを紹介する訳でもないのだからね。変な表現になったかな、別にこれが駄盤ってわけではないですよ。それどころか、実は僕が一番気に入っている作品なのです。好きな作品を好きな時に聞ける、幸せですな。
ゴードンのオリジナルのバップ曲が4曲で、スローが中心のスタンダードが5曲。ホット&クールというタイトルはこのあたりから付けられたのかな。まぁ、軍配を上げるとしたら、スタンダード。こっちがクール側になるのかな。スローだけど演奏の内容はホットな気持ちにさせてくれますよ。テナー語り掛けにはうっとりしますもんね。復帰以降、特に1970年代の作品には長いソロを 聞かせる作品が多いのですが、その長さに閉口してしまう場面もありました。ここではこれ以上短かったら物足りないギリギリの時間で、自分の気持ちを表現仕切ってますね。 麻薬で身体的にも精神的にもボロボロの状態の時の録音ですが、ある一瞬、何かインスピ レーションが湧き出して、この録音になった、そー解釈したくなります。ピアノのカール・ パーキンス、このコーナーではお馴染みだと思うベースのリロイ・ビベガーのバッキングも光ってますよ。