2001年9月4日掲載
Bluiett・Jackson・El'Zabar    The Calling
Justin Time原盤                     2000年10月録音

 プロデューサーの仕事は多岐に渡るもので、それこそ金の計算も重要なことなのである。莫大な費用を注ぎ込むポップス作品の金計算も大変だろうが、それこそ初版プレス2,000枚程度のジャズ作品も少ないなりに苦労が多いはずだ。勿論プロデューサーの仕事の大きな部分は製作企画なのだが、日本のそれは細部に渡って口を出していそうで、つまらない作品が多いのは、衆目一致のとこだろう。

 その製作企画の中に、ミュージュシャンの組合せというのがある。今日取り上げるこの作品は、まさに値千金の人選であろう。バリトン・サックスを中心に演奏しているHamiet Bluiett、アコースティック・ピアノを中心に演奏しているD.D.Jackson、ドラムを主に歌まで披露しているKahil El'Zabar の3人である。ジャケで見事に絵になっている3人の組み合わせを見て、喜ぶのは僕だけではあるまい。特にマレイ絡みで3人に接してきたのですが、WSQの一員のブルーイット、1990年代のマレイ作品を支えたジャクソン、1989年にマレイとのデュオ作を発表したエルザバーの組合せは、涎が出そうである。

 メンツとジャケだけで名盤なのですが、その中身はどうでしょうか。

20010904

 響き方が面白い打楽器,オルガン,バスクラで奏でる美しいメロディだけで十分満足の「open my eyes」だが、たどたどしいが心に残るエルザバーのヴォーカルがフューチャーされ、良い出来。続く「sai-wah」は壮大なメロディが印象的な曲で、アコースティック・ピアノ,シンバルを多用したドラム,そして見事なソロを取るバリトン・サックスで演奏されています。さらにエルザバーのコンガが冴え渡る「when the elephant walks」,「blues for the people」と展開されています。

 この前半は3人の協調ぶりが光っているのですが、後半は3人のぶつかり合いが、いくつかのタイプの曲によって、聴くことが出来ます。

 協調と格闘によって3人の持味が存分に発揮された聴き応えある作品であり、見事なプロデュースと言える出来です。