2001年9月25日掲載
Jean-Philippe Viret     Considerations
Sletch原盤                 2000年10月作品

 ベーシストがリーダーのピアノ・トリオはこのコーナーでも多数取り上げてきた記憶があり調べて見たところ、5枚だけでした。しかしどれも私の愛聴盤席に座っていた経験のある作品ばかりであり、ベースがリーダーのピアノ・トリオというのは僕とは相性が良いようです。

 今日取り上げる作品は、ジャン・フィリップ・ヴィレというベーシストがリーダーであり、エドワード・フェレがピアノ、アントワン・ハンヴィルがドラムスです。全8曲彼らのオリジナルであります。

20010925

 アメリカも欧州も外国である日本人は、ジャズ本国ではない欧州ジャズに対して、欧州独特のものを求める。最近はエヴァンス系がイコール欧州系になっている状況ですね。

 しかしながらここ数年のジャスミンによる1950年代のイギリスのテンポ・レーベルのCD化、リアワードによる1960年代のイタリア作品の復刻盤を聴けば明かな事なんだが、懸命に本国アメリカを模倣していく過程で個性的なミュージュシャンを排出した1950年代、また1960年代中頃以降はフリー・イディオムを加えて独特の姿に、欧州ジャズは変貌していきました。その根底には、長年に渡って受け継がれてきたクラシック音楽と演奏技術の高さが、見え隠れしていました。

 このアントワーヌ・エルヴェの作品には、クラシック音楽にある壮大な音の組合せが、ピアノ・トリオという演奏形態とは思えない音として表れています。アメリカがベンツ等の欧州車の乗り心地を作り出せないのと同様に、この作品でのサウンドはアメリカ人には出せないのではないでしょうか。全8曲がまるで組曲のようなこの作品は、欧州ジャズの良質な部分が結実された作品と言えるでしょう。