アラン・ブロードベントという名前には、微かな記憶がある。まだピアノ・トリオに熱心では無かった10年ほど前の渋谷ジャロさんで、その道にはまった方々がこの人を話題にしており、もう少し本筋のを聴けばいいのにと思っていたのだが、澤野さんが復刻したおかげで僕もこうやって聴くことになったのです。
ニュージーランドの方で、レーベル名を見ればそのまんまですね。確かコンコードにもサイド・マンとして参加していたはずなので、そちら系統からこのピアニストの名前を記憶されている方が多いのでは。
1947年生まれの彼は、1960年代後半にはバークリー音楽院に在籍しており、またこの時期を挟んでレニー・トリスターノにも師事しておりました。ウッディ・ハーマン楽団に在籍してた際に作編曲に注目を集め、1972年にはダウン・ビート誌批評家投票で新人賞を獲得しました。1980年代からコンスタントに作品を発表し、ピアノ・トリオ作品に注目が集まるのみならず、オーケストラものでも評価を受けておられるお方です。
Andy Brown(b),Frank Gibson(d) とのこの作品は、恐らくトリオものとしては最初の作品であり、スタンダード5曲の中にブロードベントのオリジナルが1曲加わった選曲です。
ドラムが張り切り過ぎと感じる人がいるかもしれないが、ドラムの鼓舞に対してピアノに乗れる力量がなかったと言えるのではないか。これだけキレの良い叩き方をしているギブソンに対して、ブロートベントは優しい綺麗な演奏を体を縮めて行なっているね。さすがにデカイ音でドラムを叩けないスローの2曲で、ようやくブロートベントの持味が発揮されている状況です。
聴き方次第で、ドラム支持派とピアノ擁護派に分かれる作品でしょう。