寺島さんも何でドン・メンザなんて言う無名のテナー吹きを取り上げるのかと思ったのですが、「ジャズ人名辞典」に出ているお方でした。1936年生まれで、様々なビッグ・バンドで活躍された方のようですね。寺島氏が惚れた理由は、音色だとか。グジュグジュでゾリゾリっとしている音だとか。何だか良いのか悪いのか分からない表現です。
本作品のもう一つ顔が、バックのピアノ・トリオ。先に取り上げたジョー・ハイダーのトリオなんですよ。その時とメンツは違いますがね。僕としてはそっちの方に興味津々でして、何しろこのハイダーの素敵な「Bilein」が収録されていますからね。
メンザのテナーは、ゴードンを2流にしてジョー・ヘンを混ぜた音色に節回しですな。様々な情景を描きながら緊張溢れるピアノを弾くハイダーに、決して負けていないサックスです。この作品は恐らく僕は愛聴盤になると思っているのですが、その要因は曲。
「Bilein」は先に取り上げたハイダー自身の作品とこれで、すっかり今一押しの曲になっております。他にハイダー作で日曜の午後に似合いそうなワルツ「karen's birthday waltz」も素敵な曲。何故かこの曲だけフルートを吹いているメンザも、清清しいね。
ハイダーだけではなく、メンザの曲作りも味のあるもの。バラッドの「it's april again」は、B級やくざ映画の泣かせ所で流れたらシビレルね。また二人の共作の「B-4-U leave」の快速感も、思わずカラダを揺らしてしまう内容ですよ。演奏者の曲だけの作品で、これだけ良い出来の曲が並んだ作品は、滅多になし。メンザのサブ・トーンが少々耳に付くのが欠点と言えるが、いま旬のピアニストとの演奏が聴け、未知のサックス吹きに出会え、かつ良い曲を楽しめる作品です。