2001年8月8日掲載
Jimmy Knepper   a Swinging Introduction to J.N.
Bethlehem原盤   1957年9月録音

 1980年代前半の新譜を追いかけていた人にとってジミー・ネッパーというトロンボーン奏者は、アダムス‐リッチモンド・クィンテットの印象が強いことでしょう。ジャズ聴き始めが丁度この時代の僕はジョージ・アダムスに熱心でして、このネッパーさんも実に印象深いミュージュシャンであるのです。最も一般的には、1957年以降数度に渡って参加していたミンガスのジャズ・ワークショップでの活動が、ネッパーを有名にしているものでしょう。アダムス‐リッチモンドは、ミンガス時代の同期生ですもんね。

 1927年にLAに生まれたネッパーは、1940年代からプロとして様々なバンドで活躍してきましたが、何せモダン期のジャズ界では脚光を浴びる楽器でなかったため、サイド・マンとしての活動が主になっていました。実質的な初リーダー作品であるこの作品は、ミンガスの強い推薦で吹込みが決まったとのことです。ジーン・ローランド(tp),ジーン・クイル(as),ボブ・ハーマー(p),ビル・エヴァンス(p),テディ・コティック(b),ダニー・リッチモンド(d)が参加しての演奏です。

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 9曲中6曲がペット抜きのクィンテット演奏。明解に爆走するクイルのアルトとの対比で、ネッパーのトロンボーンの暖かみのあるフレーズが堪能出来ます。陽気な「love letters」、寂しさを上手く表現した「how high the moon」が出色の出来です。ネッパーとクイル、本当に音色といいフレーズといい、相性抜群のコンビですよ。

 残りの3曲はペット入りにクィンテット演奏なのですが、ペットは添え物程度の扱いなので、ネッパーの演奏に傾注出きる内容です。ジャケから漂うネッパーの渋さが感じられる彼のヴォーカル入り「gee baby ain't I good to you」が素敵ですね。

 さてマイルス・グループに入る前年のエヴァンスの演奏、私はペット入りセッションが彼の演奏だと感じたのですが、CDに封入されている小川氏の解説ではクイル入りセッションとのこと。エヴァンスの個性がまだ開花していないのは当然として、このセッションでは先輩方から漂う雰囲気に合わせて演奏していたのでしょう。それはさておき、この作品はネッパーにとってもジャズ界にとっても良い作品だと思うのですが、世間の評価からは埋れているのが残念です。