この作品は、エラルド・ヴォロンテ(ts)の代表的傑作と言われている1枚だそうです。1922年にイタリアに生まれた彼は、ダンス・バンドでバイオリンを演奏した後の1936年に、テナーを始めました。オーケストラで演奏をする一方で、1940年代後半からはいち早くバップにも取組み、常に進歩的な姿勢でジャズに取組んできたそうです。1963年吹込みの「my point of view」では、コルトレーンの影響を感じさせるモード手法で力強い演奏で、評判になったそうです。
欧州ジャズがその独自性を示し始めた1960年代後半に、Giovanni Tommaso(b), Franco Tonani(d), Franco D'Andrea(p)というこの時代の旗手達に含め、Dino Piana(tb)を加えてクィンテットで吹き込んだ作品です。
コルトレーンが具現化していったモード手法のみならず、オーネット・コールマンが提示したフリーの手法が、イタリアで花開いていることを見事に示している1枚です。重要点は、独自性があること。これはヴォロンテやダンドレアの個性が発揮されていることもあるのですが、僕にはヨーロッパ独自のものを感じます。汗が飛び散る熱気で推し進める本家アメリカに対して、静寂のバランスをいかに傾けて行くかを考えているような感じだ。欧州ジャズに対してよく用いられる「知的でクールで」という表現は、まさにこの辺りを指しているのであろう。必聴の1枚です。