2001年10月1日掲載
Janet Seidel    The Way You Wear Your Hat
La Brava Music原盤  1998年9月録音

 先に取り上げた2作品の中間にあたる時期に吹き込まれた作品です。

 先の2作品にも参加していたKevin Hunt(p),David Seidel(b)に加えて、Bob Jeffery(sax,fl),Billy Ross(d)が加わってのクァルテットをバックにしており、ストリングスは加わっておりません。で、この作品の目玉は2枚組み。6日にオーストラリアのアート・ギャラリーで行なわれたライブ録音で1枚、その二日後のスタジオ録音で1枚という内容です。

20011001

 いきなり余談ではあるが絶頂期の王選手が、羽田空港であった女性歌手にサインを求めたという新聞記事を、今でも覚えている。故越路吹雪さんなのであるが、ご存知の通り日本を代表するシャンソン歌手のお方。

 その彼女が得意としていたシャンソンの名曲「hymne a L'Amour」を歌うサイデルさんは、落ち着いた大人の雰囲気が漂っており、幅の広さを感じますね。大人の魅力を持っていなければ歌えない「I love paris」を、低音を魅力的に響かせながら、聴かせてくれています。ドリスの十八番「secret love」がインストだけでサイデルさんの歌に出会えなかったのが残念でしたが、歌手としての彼女の魅力を味わえるライブ盤でした。

 一方のスタジオ盤は、妖艶さと選曲の妙が光っています。バラッドの名曲中の名曲「my one and only love」で真っ先に思い浮かぶ女性歌手は、ロレツ・アレキサンドリアとカサンドラ・ウイルソン。その中に、ここでの色気タップリの名唱で、サイデルさんの名前が刻み込まれました。他にも、名曲がサイデルさんの魅力で繰り広げられています。アビー・リンカーンで有名な「poor butterfly」、ゲッツ&ジルベルトで有名なジョビンの「corcovado」、クリス・コナーで印象深い「someone to watch over me」そして「my foolish love」「tenderly」と続いています。サッチモの特異技「lazy river」、ナタリー・コールが好きな「pick yourself up」あたりを取り上げる辺りは、サイデルさんのレパートリーの広さが分かります。

 サックスとピアノの好演も随所に聴けて、あっという間に聴き終える2枚組みでした。