1943年生まれのエンリコ・ラヴァ(tp)と1941年生まれのジョヴァンニ・トマソ(b)のベテラン二人は、1960年代の欧州ジャズが走り出した時期に大活躍した方々ですが、1970年代はフリー系に進んでいったという印象が僕にはあります。その二人がコンビを組んで吹き込んだ作品なのですが、最初に渋谷のジャロさんの新譜コーナーでこの作品を見た時は、フリーっているのではと、購入に二の足を踏んでしまいました。その後、新譜売れ残りコーナーに値下がりして移ったところを、購入した次第です。ジャケを見ると、左側に50台のこの二人、左側に30台のような二人、Stefano Bollani(p),Roberto Gatto(d)が写っています。このクァルテットの1時間を越える演奏、どんなものなのでしょうか。
聴き覚えのある哀愁のあるメロディが続くと思ったら、欧州の映画音楽特集なんですな、これは。ラヴァは最初はボントロを吹いていたけど、18歳の時にマイルスの演奏に触れ、ペットに転向した人。マイルスの張り詰めた緊張感でバラッドを美しく仕上げるサマが、乗り移ったような演奏をラヴァは繰り広げています。またトマソのベースも、バッキングしながらも随所に抑制された美を感じさせる演奏。さすがはベテランのお二人、素晴らしい作品をここに作りましたね。時折、若い二人が突っ走ろうとするのを押えるベテラン二人、円熟味を感じさせています。最後の2曲で、今の時点で彼らが考えている革新性が表れ、今後の展開にも期待を抱かせる作品です。これは、聴き込むほど味わいが深まるスルメ盤になる予感がしますよ。