前ににここで取り上げたマリンベルニの前作「a very good year」も、このコーナーにとっては印象深い作品です。未知盤買いの魅力、まだ誰も知らない新譜を手にする喜びを味わった作品ですし、これがあったから500枚以上もここで駄文を書いてこれたんだと思っています。
Dennis Irwin(b),Leroy Williams(d)とのトリオで吹き込んだこの作品には、マリンベルニのオリジナル2曲に加え、コール・ポーターの曲などが収録されています。
8分に及ぶエリントン作の「what is there to say」は、とりたてて仕掛けが有る訳ではないですが、あっという間に聴き終える内容です。随所に溢れるマリンベルニの歌心が、光っているからでしょう。木々に覆われた渓谷に幾筋かの光が差し込み、湧き出したばかりの水の流れにその光りが跳ねかえっていくような光景が、全編に渡って展開されています。マリンベルニ節と言えるもんでしょうね。オリジナルも「pascara」の躍動感も、聴きモノ。前作に比べて白眉がないのが残念ですが、聴き応え十分の作品ですよ。