度々書いている通り、18年前にジャズを聴き始めた時から、渋谷のジャロというジャズ・レコード専門店に通っています。そこの常連さんの中にはいろんな方がいらっしゃいまして、イギリスのミュージュシャンが入った作品でなければ買わないって方がいました。当時は欧州ジャズはホトンド聴いてなく、イギリスのミュージュシャンなんてホトンド知らない僕には、その方が買っている作品は聞いた事のない人達のものだけでした。
いきなり話それましたが、この作品のディック・モリシーは、イギリス生まれのテナー奏者です。彼のプロフィールを読むと、1970年代にロック系のイフを結成していたとか。ロック少年だった僕は、このプログレ・バンドは存じています。この作品は、1960年にそれまでのクラリネットからテナーに持ち替えて、自己のバンドで「マーキー・クラブ」に出演していた時代に吹き込まれた彼の初作品で、クァルテット編成のものです。
太い音で、ガンガン演奏。例えるならジョニー・グリフィンかな。それをもっと洗練させた感じです。ロリンズの「セント・トーマス」を先頭に持ってきていますが、テーマを吹き終わった後の続けざまのソロが、豪快。このあとスタン・ジョーンズのピアノも、モリシーの影響を受けたかのよう飛ばしています。ジャケを見た影響か、汽笛のようなフレーズを両者とも連発していて、いいアクセントになっています。「where is love?」でのバラッドで勢いだけでなく、華麗さも聴かせてくれるのがまた嬉しいですね。よく分からないが、この時代のイギリスのジャズ・マンは革新的な人が多いらしく、保守的なモリシーは異色だとか。そんな状況の中で、これだけ威勢のいいハード・バップを吹き込むなんて、逆に革新的ではないのかって、ふと思いました。これはね、名盤。