デクスター・ゴードン(ts)の1960年代初頭までの活躍は、皆様よくご存知でしょう。また1976年2月にアメリカのジャズ・シーンに復活し、数多くの作品を吹込み再び人気を博し、その頂点がパウエルをモチーフした映画“ラウンド・ミッドナイト”での主役を務めたことであることも、記憶に新しいことだと思います。この作品は、1960年代に欧州に渡り活動していたゴードンが、アメリカ復活直前に、チューリッヒのジャズ・フェスで吹込んだものです。ケニー・ドリュー(p)のトリオがバックを務め、ロリンズの“テナー・マッドネス”や、ボサ・ノヴァの名曲“波”などが演奏されています。
豪放なテナーで酔わせてくれるのだけれど、 繊細なフレージングは陰を潜めていますね。“酒薔薇”では、ノリノリ・テナーでまるで別の曲のようでした。しかしこんな不満は、この痛快な演奏の前では、小さいもの。ぶっ飛びテナーを思いきり堪能出来る作品ですからね。このレーベルには10枚近く吹込んでおり、ここでの快調さがあって、アメリカでの復活に繋がったのでしょう。第2集も青いジャケで発売されていますよ。