このロブ・マドナというピアノ弾き、ピアノ・トリオ収集家の間では有名らしいですね。この作品は昨年より、あっと驚く復刻を次々に遂げた澤野商会からの発売で、そこに封入されているメモ書きでしか、僕は彼について書くことがありません。リタ・ライスの伴奏を務めていたそうですよ、マドナは。その彼がエヴァンス奏法へ変貌をとげ、自己のスタイルを確立したのが、この作品。でもこれ、発売直前に回収され、幻の名盤化されていたそうです。でもね、回収されたってことは、内容的にイマイチだったからだと思いますけどね。ガレスピーやコルトレーンなどの曲と、マドナのオリジナルが収録されています。サイドは、Koos Serierse(b)、Erik Ineke(d)です。
シンバルがウルサイ。これがこの作品を台無しにしています。特に最初の曲にこの欠点が目立つから、またシンバ ルの録音レベルが高いから、余計に強く感じてしまいます。ブラシでの演奏のは、まだ良い のですけどね。マドナのソロ演奏の“the end of a love affair”や、ベースとのデュオの “like a princess”では、マドナの悲しい甘さのピアノに酔えますよ、シンバル無しですからね。そんな思いで聴き進んだ最後のコルトレーン作の“like sonny (simple like という名でも知られている)”では、マドナの魅力が存分に楽しめるドラム演奏になってます。これは、シンバルの録音レベルを抑えてあるからです。この作品が発売直前に回収された のは、シンバルの出来というか録音レベルにマドナが嫌がったのでしょう。ミックス・ダ ウンが気が利いていれば、素晴らしい作品になったと思います。