これは、マーク・ジョンソンとのデュオ作品です。マークはピエラヌンツィのトリ オ作品のベーシストとして、僕が知っているだけでも2枚の作品があります。デュオ作品が制作された背景は、ライナー・ノーツに二人のインタビューとして書かれています。この年の6月にマークはピエラヌンツィを、クラシック音楽フェスティバルに誘ったそうです。そこではピーター・アスキンを入れたトリオでの演奏だったのですが、お互いにデュオで演奏 したくなったそうです。それで誕生したのが、本作品。ということは、クラシック色が強いのかな。大学時代は室内楽で活動していた一方で、スコット・ラファロの奏法を研究していたマーク。ピエラヌンツィと二人だけの演奏、さてその内容は。
3曲目のピエラヌンツィ作の “ein li milin(no more words)”がね、甘さの限界に挑戦したような演奏。思いっきり甘いのだが、それがしっかりとジャズとして成り立っているのは、何度もピエラヌンツィに使う 表現だが凛々しさと創造力なのでしょう。マーク・ジョンソンはピアノとのデュオ演奏を心得ているようで、随所に盛り上がりと多彩な技を繰り広げています。スタンダードの“all the things we are”と“on green dolphin street”での二人の独特の解釈に感心しますが、 デュオならではのピエラヌンツィのスタイルの変化はありません。贅沢な不満なのかな。 このIDAというフランスのレーベル名を聞くと、1980年代に鮮やかに蘇ったバルネ・ウィ ランを思いだしますね。確か4枚あるはず。この作品にIDA作品一覧があるのですが、ピ エラヌンツィはこれを含めて3枚あります。そのうち1枚は、チェット・ベイカーと吹込んだものです。興味大有りです。